人材紹介企画 「コーキョーメグリ」vol.1【林 博司】


↑&greenの舞台でもある北本団地商店街

林 博司さん
パブリシンク株式会社(埼玉県北本市)

‐聴く人・書く人‐
鈴木 克典(静岡県島田市)
鈴木 克典 | Public Platform (public-platform.jp)


 東京駅で新幹線を降り、在来線ホームへと急ぐ。このサイトの管理者でもある、パブリシンク株式会社の林さんに会うためだ。北本市を目指し、乗り継ぐのは高崎線。かつて始発は上野だったが「上野東京ライン」とやらが開通し、今は東京から直通列車が走っている。うん、便利。
 各駅停車だが、二階建てグリーン車が連結されている。到着時刻は変わらないが、車窓から風景を撮りたいので、上層に陣取る。都会のビルをすり抜け、荒川の鉄橋を渡り埼玉県に突入。しばらく景色は変わり映えしない…と思ったら、到着まであと2分。急に住宅地の隙間に雑木林の緑が増えてきた。同市のシティプロモーション「& green」の響きがシックリくる。降車前から楽しみだな。


市外から北本市役所に入庁したと伺いました。この地を選んだ理由など、少し聞いてもいいですか?
 公の仕事の一つとして、市役所職員に興味を持っていたのですが、面白い世界だとより感じるようになったのは、大学3年生で元鳥取県知事の片山善博さんのゼミを取ってからです。初めは、地元の上尾市やさいたま市を念頭に置いていたのですが、先生から「なるべく小さな自治体の方が、やり甲斐があるはず」とアドバイスされ、周辺の10万人以下の都市である北本市を選びました。

この流れで、退職した理由も聞いちゃっていいですか?
 入庁2年目から広報を5年弱ほど担当する中で、自分より質の高い広報誌を生み出している職員が全国にはたくさんいることを知りました。そうした人たちと出会い繋がることで、広報業務だけでなく財政・シティプロモーション・ふるさと納税と異動した先でも、より良い仕事を目指すことができたと思います。
 一方で、シティプロ・ふるさと納税では民間や市民と仕事をする機会も多かったので、その人たちと仕事をしていくのが「すごく」楽しいと感じるようになりました。市役所の仕事もとても重要だけど、外側で誰かと一緒に何かを創り上げていく仕事の方が自分に向いている。また、そちらの領域の方が社会としても不足しているのではと考え、そこで精一杯頑張りたいと思ってしまったんですよね。それからの決断は、我ながら早かったと思います。

独立して「パブリシンク」を立ち上げてからも、北本市に携わっていますね。 
 北本のことが、シンプルに好きなんですよね。私は外から来た人間ですが、新しいチャレンジを「いいんじゃない」と受け入れてもらえます。市役所の中にも街の中にも温かく迎えてくれる風土があって、「想い」の面で共感できる人たちが多いことが、独立しても北本市に会社を作りたい、関わり続けたいと思える理由ですね。もちろん、東京のベッドタウンと言われる一方で、自然もかなり残っているし、ゆったりとした雰囲気の中で暮らせる環境も最高です。でも一番好きなのは、人なんですよね、やっぱり。


林さんの活動の軸になる、理念はどういったものですか?
 会社名「パブリシンク」の語源は、パブリックとシンク(考える)です。今までは公共といわれる領域を、行政が全部を担うという考え方が強かったと思いますが、人口も職員も税収も減っていく中で、まちづくりは今まで通りのやり方では限界が来ると、市役所の仕事をしながら感じていました。公(おおやけ)は、官民だけでなく異なる自治体同士(官官)がより繋がっていく方向性でしか、良い状態を保てないのではないか。そんな思いから、実績のある現役の自治体職員も、気持ちよく他の自治体を支援できる環境を構築するために、パブリシンクとしてこのサイト「Public Platform」(パブリック・プラットフォーム事業)を立ち上げました。
 それぞれの分野で優れた結果を残した公務員は、全国に多く存在しますが、他市町の役に立ちたいと思っても、自分の実績を自から発信することは難しいことです。また、公務員が営業活動をする訳にはいきません。だから、当サービスで実績と外部支援の志を可視化し、代わりに発信していきたいと考えています。

プラットフォーム事業の主な特徴を教えてください。
 一つは、自治体間の橋渡しです。これまで外の現職に頼めることといえば講演くらい。例えば、隣県の市職員が直接、ふるさと納税のウェブサイト構築に口出しすることは稀有ですよね。でも、当社が間に入ることで、事業の企画段階から実施・運営の各場面で、多様な人材が直接的かつ全体的にサポートできるようになります。
 もう一つは、正当な対価の交渉です。活躍する公務員は、能力や労力を搾取されるという非常識な環境下にあります。現職が他の自治体から直接依頼を受けてしまうと、公の精神から報酬を交渉しづらいという実情があります。
 しかし本来、何年も掛けて培ってきたノウハウを、時間を掛けて他の自治体に提供するのだから、交通費だけでは不当なはずです。「手伝うのは、大変なだけだから止めよう」となれば、社会としても大変もったいない。そこで、公務員が他の自治体を気持ちよく支援できる環境を構築するために、当社が交渉を代行したいと考えています。

最後に、林さんにとっての「公共」とは?
 みんなが楽しく生きるために、みんなで協力しながら作り上げていくこと、でしょうか。
 行政でいえば、自治体はとかく身内だけで悩みがちですが、外からの刺激を得ることで上手くいく場合が多々あります。このサイトで紹介している講師陣は、私自身が公務員時代から相談に乗ってもらってきた、深く繋がっている人ばかり。地域に課題があれば、ぜひ一度ご相談いただければと思います。当社としては、多くの力を集結しているからには、プラットフォーム事業を行政が抱えるどんな課題にも対応するソリューションを提供できる、そんなサービスに育てないとならない…責任重大です。


【帰路の車中で想う】
 北本市の広報紙やシティプロモーション、ふるさと納税の実績を知る人は多いだろう。初回の公共巡りでは、その元担当者のスイッチがどこにあるのか、肌で感じることができた。住民に会う度に、笑顔で未来を提案する林さん。
 恩のような想いが、彼をONにするのだろう。ますます、北本市から目が離せないな。
 意外な一面がもう一つ。取材中も終始、優しい表情の林さん。でも、まちづくりの話になると、メガネの奥の瞳をキリッと光らせる「公共サイコパス」な一面が…自治体にとっては頼もしい限りだが、ちと背筋が伸びた。

‐話す人‐
林 博司(ハヤシ ヒロシ)パブリシンク株式会社・代表取締役/合同会社LOCUS BRiDGE・共同代表

林 博司 | Public Platform (public-platform.jp)

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